バナナはおやつ

しがないOLの人生とその先について。

カムアウトの話

 

今の恋人は、私の過去について知りたがる節がある。何度かははぐらかしたが、しつこく聞かれた時になんとなく言い出せなくて、異性に置き換えて話してしまった。アレがいけなかったなあと今になってぼんやり思う。

 

今の恋人にとって、性的少数者は「テレビの中の存在」なように思う。言葉は勿論知っているし、否定もしないし気持ち悪がることもしないけれど、見えないところでやってくれ、という感じ。あくまで彼が選ぶ言葉から感じた感想でしかないのだが。

一度、テレビの中の彼らについて恋人と話題にしたことがある。その時に言われた、「男が女を、女を男が求めるのは本能でしょ」という言葉が、今も頭から離れない。どちらかというとパリピに分類される彼から発せられたその言葉は、それ以降カミングアウトへの大きな壁になった。

彼が発した言葉に対して、ああ、これがごく一般的な感覚なんだな、とただそう思った。

 

最初は、絶対に言わないつもりだった。理由は、相手にメリットがないから。私からすれば勿論、すっきりするという至極個人的な心理はある。しかし、異性の恋人がいる以上同時に同性の恋人を作るつもりはないし、言う必要はないと思っていた。だが、恋人に「全部を知りたい」などと言われたら、そりゃ、もちろん引っ掛かる。

 

一人で悩んでいても埒が明かないと思った私は、私が同性愛者であったことや現在付き合っている人がいてその人が異性であることとか、そういうことも含めて洗いざらい話せる友人数人に相談することにした。

案の定、「カミングアウトはやめておけ」と口を揃えて言われた。

そりゃそうだ。いらぬ波風は立てない方がいい。と納得したが、でも、やっぱり隠し事はしたくない。隠し事をした事実は残るからだ。だが、私の目を見て、真っ直ぐに「言えないことなんてひとつもない」などと宣うこの人に、刺激が強すぎるんじゃないか。心配性の恋人に、要らぬ心配をかけさせる必要はないんじゃないか。と悶々として早10ヶ月。

 

10ヶ月の間に、わたしも何度か言い出そうとした。が、なんとなく、が積もって、言えなかった。今後カムアウトするかはまだ決めかねている。

 

今、私は実は両性愛者だったんだなとぼんやり思っている。同性愛者であると思って生きてきた私にとっては少々ショッキングなニュースであったが、たぶん人生にはそんなことがいくつかあるんだと思う。

 

私は、今まで付き合ってきた同性の恋人がいなければ今の私はいないと思っている。ものの考え方や好きなものや、食べ物や、映画、本、ファッション。挙げればきりがない。人生においてたくさん影響を受けたし、そりゃあ楽しいことばかりではなかったけど、どれもこれも大事だ。

 

だけど自分の中の大事にしたいそれを、受け取り方が違う他人にさらけ出すのも違う気がしている。私の語彙力で理詰めの恋人を説得できればいいんだけど。困ったな。