帰る場所の話
つい考えることをしないわたしになりたい、と、何度も何度も思ってきた。
また思っている。
一年以上ぶりに、地元に帰った。
久しぶりの実家は、記憶にある実家よりものが減っていた。
思い過ごしかもしれないけど、わたしが見ていた風景から少しずつ変わっていく景色に、寂しさと日常を感じてしまった。
わたしが毎日生きているように家族も毎日それぞれの人生を生きていて、生きていれば死ぬんだな、とも思った。
髪のボリュームが減った祖母に、以前より痩せた祖父。シワが増えた母と、小さく見える父の背中。
この人たちの愛に比べたら、わたしのやりたいことや考えていることなんて吹いたら飛ぶくらいちっぽけなもので、今の日常と比べてみたら、もう、何が大切なのかよくわからなくなった。
意地を張って、気を張って、わたしはなんで一人で生きているんだろう。この大好きな人たちに、あとどのくらい会えるんだろう。
なにも考えずに毎日ちゃんと働けていたら、こんなに後ろめたさや罪悪感は感じなかったのかな。
ちゃんと働きたかった。安心させてあげたかった。
不安そうな顔じゃなくて、喜ぶ顔がたくさん見たかった。
実家は「帰る場所」ではあるけれど、「居場所」じゃないのは重々分かっている。
もう、ほんとに、やだなあ。わたしに見える現実は、今目の前にあるひとつしかないのに。
やだやだ。